この日は朝から不思議な感覚だった.
至る所からふと香る旧い空気.いや,新鮮な空気だっただろうか.
フイルムを交換して顔をあげると,先程まで明るかったはずが真っ暗な地下道にいた.
上階から流れてくる楽しそうな音楽と人声が足をゆっくりと動かす.
ここは一体...
そうだ,ここの住人になろう!と思った次の瞬間,帳の降り始めた昭和83年の大阪に戻っていた.
しかしまたあの旧い空気が鼻腔を駆け抜け,靴先は自然と方位を定めるのであった.
道頓堀極樂商店街
Leica M3, SUMMARON M f=3.5cm 1:3.5, FUJICOLOR 100